老人性難聴は老化による機能低下が原因

老人性難聴は加齢性難聴とも呼ばれる内耳及び後迷路器官全般の機能低下により引き起こされる症状です。高い周波数帯から徐々に聞こえにくくなることは、年齢と共に高周波音が聞こえにくくなる老化現象の1つです。例えば、10代ならば聞き取れるモスキート音と呼ばれる高周波音は、30代で聞き取れる人がほとんどいなくなるように加齢に伴い高周波音ほど聞こえなくなります。老人性難聴では、電子音といった4kHz以上の高周波音が聞き取りにくい状態から症状が進行し、1kHzといった日常生活で会話に使われる周波数帯域まで症状が進むと何度も聞き返して会話が成立しづらくなるわけです。

日本語は50音と呼ばれる基本的な音には母音が含まれていて、ア行以外は子音と母音の組み合わせで発音しています。子音の中でも高周波音を使っているサ行から聞き取りにくくなり、破裂音のパ行まで聞こえなくなると会話で齟齬が出やすくなるはずです。サ行とパ行の音が全てア行に聞こえたら、暗号を解いているような気分になってしまうでしょう。老人性難聴は一度聞こえなくなってしまった音を聞き取れるようにする根本的な治療方法はなく、補聴器や聴覚リハビリといった方法で残されている聴力で聞き取れるように改善します。老人性難聴に慣れてしまっていると、補聴器で音圧レベルを高く補正しても脳内でしばらく認識されていなかった音をうまく処理できないことがあるわけです。聴覚リハビリにより補聴器で補った音を正確に脳内で認識できる訓練を行うことで、会話が成立しやすくなり社交性を回復させるきっかけとなります。